think outside the box

たわいもない斜めの視点

インスタには映らない世界《ルポ川崎》

最近一つ論考している議題がある。
環境はどれくらい人に影響を及ぼすのか。


日本は世界から見たら相当安全な国で1人で夜出歩いても何もないし、電車でへべれけで寝てても何も盗まれないし、ピアスを盗む為に耳ごと切っちゃうなんて事件もまずない。
そんな中でも比較的治安が悪いとされる地区は存在する。有名なのは、三大ドヤ街と言われる、【東京山谷】や【横浜寿町】そして【大阪西成】。
他にも調べると色々な場所がでてくるが、関東近郊だとこの川崎の名が上がる。
この本はBAD HOPという川崎に根付いたラップグループなどの証言やインタビューを元にリアルな川崎を描いたルポルタージュである。

僕も何度か川崎には行ったことがあるが、川崎大師や川崎駅前付近などは歩いていてもそれほど危険な感じはしない。
ヨハネスブルグやサンペドロスーラの類の1日に何件も殺人ご起きるような場所ではないにしろ、雰囲気は割と平穏としている。しかし、堀之内などの風俗街へ行けばまた雰囲気は変わるだろうし、工業地帯付近の住宅街や団地などは、特異な雰囲気を醸し出しているのかも知れない。
ここで紹介されているBAD HOPのメンバーや登場する人物のほとんどは片親だ。中には母親が3人いるとか腹違いの兄弟が何人かいるのがザラだ。他にもフィリピンや朝鮮とのハーフなどもいる。
川崎は戦前から臨海部の工業地帯で働く為に朝鮮半島アジア諸国から人が移り住んで来た経緯があり、在日の人口も非常に多い。そのため、そういった街を狙い打ちするヘイトデモも多い。

片親というと、どうしても家庭は貧困に陥りがちで、親もいなくお金もないと子供はどうしても非行や犯罪に走る。
育つ環境が与える影響は大きくて、周りにヤンキーが多ければ必然的にヤンキーになる奴は増えるし、エスカレーター式にヤクザまで行ってしまうものも少なくない。
なぜなら、それが一番お金が稼げるからだ。
もしくは、有り余る体力や溜まっていく憤りや世の中への不満を爆発させる手段なのかも知れない。

しかし、このBAD HOPの登場とフリースタイルダンジョンや高校生RAP選手権に代表されるラップブームや、90sの流行りによるスケーボーなどのサブカルチャーリバイバルブームで川崎の不良達にも変化が起きている。
今までのように有り余った体力の使い道が暴力や犯罪ではなく、音楽やカルチャーに向いているのだ。
ここに書いてある事が全ての人に当てはまる訳では当然ないし、王道のパターンを上り詰める奴も存在するとは思う。
でも少なからず、今までとは違う形の生というものの提示が示されディストピアからの離反が起こっている。

人は環境というものに左右され作用される。どこで生まれて誰に育てられて。
自分では選択出来ない事柄を背負って育っていく。
進む右手とそれを制す左手の中で矛盾を胸に日々を過ごす。

インスタには映らないものがそこにはある。