think outside the box

たわいもない斜めの視点

素晴らしき人生とは《死にたい夜に限って》

死にたい夜にかぎって

死にたい夜にかぎって


本屋にある新刊のコーナーでこの本を見た時の感想はまずこの本はないなと思った。
まず、このパッケージがあまり好きではないし、死にたい夜に限ってという題名も今僕は死にたくないし、爪切男という作者名も嫌悪感を漂わせる。
でも、何故か本屋に行くたびに目に付いてしまいどんな内容なのかを確認してみる為に恐る恐る棚に手を伸ばす。
そして、全体の内容と冒頭の何文かを読んでみる。
最初の何文かを読んでみたときにスーと文書が入って来てもうちょっと読みたいなとおもったら買う事にしている。
その規約に漏れなく引っかかった。

この本の全体的な内容としては、作者が心的な病気を抱える彼女との同棲生活を書いた話しで、下ネタが多く人によっては不快な気分になる箇所もあると思う。
この本を一言で表すなら【ジワる】。
ジワるという表現は笑いという意味合いで使われる事が多いが、笑いにしろ少しの感動にしろ切なさにしろ、水の中にインクを落とした時の様なジワっと感が広がる。
暗喩や直喩の使い方や表現の仕方が面白く、割と下衆な話しの内容にも関わらず全体的に温かみがある。

病気持ちの彼女との同棲生活を軸に作者が今まで出会ってきた女性の遍歴が描かれているが、その女性達が中々の物で、唾を売りながら生活する彼女、テレクラで出会った188センチのデイダラボッチ、童貞を捨てた時の車イスの女性、信仰宗教家のヤリマンや、初恋の相手は自転車泥棒などボリュームとしてはかなりのものである。

往々にして変な人と出会いやすいという人種は割と多くて、僕もその類の人種に入る気がする。
僕が今まで出会って来た女性達も一風変わった人も多く、ブルー将軍を殺す時のタオパイパイのごとく耳に舌を突っ込んでくる女性や、自分の姉のまだ2歳ぐらいの子供を誘拐して散々連れ回した挙句、姉の自宅から2時間はかかる僕の自宅まで連れてきて、理由を聞くと姉の子供を僕に見せたかったと話す彼女(この後、姉の地元では大捜索が行われ、半狂乱のお姉さんから電話がかかってきて、事情を説明し彼女にお金を渡してタクシーで帰らせた)や、深夜に窓を少しだけ開けて音楽を聴いていたら外から、
すいませんーすいませ〜んという声がするので恐る恐る窓の外を見てみると、そこには1人の女性が立ってこっちをみている。
どうしましたー?
と声をかけると、今流れてる音楽私も好きなんですという。(ちなみに僕の家は一階です)
心の中で知らんがな!と呟いたが、時刻は深夜の2時だし得体が知れなさすぎるこの女性を穏便に返そうと思い割と優しく接していると、何故か彼女は柵を越え僕の家のベランダの前まで近づいてくる。
このままちょっと寄ってっていいですか?と言わんばかりの表情をしている。
さすがに怖くなり明日早いんでという理由で帰ることを促した。
近くに住んでいると言っていた彼女には2度と出くわしていない。


世の中の平凡や普通の概念は時代や流行で変わるし、おもしろいや不幸の感じ方も完全なる主観になるのだが、物の見方によって全てが変わるのなら僕は全てをおもしろいと思っていたいし、楽しんで生きていたい。
この作者の様に決して他人が聞いたらいいとは思えない事柄も面白おかしく捉えればそれは作品になったりする。
マーブル模様の人生は白が多いに越したことはない。

こんなブログを描いていたら、今朝方家の給湯器が壊れて、一週間お風呂に入れなくなった。この一週間をどう捉えて乗り切るのか。

僕は今試されている。