think outside the box

たわいもない斜めの視点

正しいか正しくないかではない《安楽死を遂げるまで》書評

安楽死を遂げるまで

安楽死を遂げるまで

注✳︎僕は病んでる訳ではありません。


死をロジカルに語るのは難しい。
死んだ後の事は誰にも聞けないし、死ぬ間際の瞬間どんな気持ちになって、どんな事を考えるのかもわからない。
日本で人が死ぬところを目撃することは、街を歩いていてセブンイレブンを探せないぐらい難しい。
圧倒的に死から離れた生活をしている。

本書を読んだ後、僕は安楽死に対して今まで何を知っていたんだろう?と問いた。
死ぬ時は苦しまずに死にたいっすねーとか、人に迷惑かけたくないっすよねーとか、まだ予想出来ない死の間際を簡単な言葉で吐き出していた。

本書はマルチリンガルの著書が、安楽死や自殺幇助が認められている様々な国に行き、実際に安楽死が行われる現場に立ち会い、その前後の様子や死者の家族にもインタビューを行い、色んな角度からの視点で描かれている。

本書と真っ向から向き合っていくと、かなりの力を消費する。
考える事がありすぎるのだ。
今までの安楽死というもののイメージは、決して簡単ではないとは思ってはいたが、実際よりももっと安易で形式的なものだった。
しかし、そこに関わる自殺幇助の医師や家族、友達、恋人。
理由、場所、時間。
色んなものや思いが複雑に混じり合う。

仮に今親や友人が安楽死をしたいと言ってたきた時に、自分はなんと返答できるのだろうか?
あなたの人生だから好きにすればいいと言えるだろうか?

ある一人の安楽死を選んだ老人の、まだ幼少期の孫に祖父の安楽死についてインタビューする場面が描かれている。
その孫は、死さえも自分自身の選択で決めていいというニュアンスな返答をしていた。

宗教的な考え方の違いもあるとは思うが、圧倒的に死生観が違うのだ。

正しい正しくないの陳腐な答えではなく、もっと深いところの様々なシュミレーションからくる思いや考えが交差して、普段使っていない脳のどこかの部分が、急速に回りだす。


本書を読んで安楽死はありかなしかを考える事はとても意味があることなのだと思う。